Enjoy Nippon
―― 日本文化を、楽しもう。私たちが日本酒を造り続ける理由は、単に酒を世に届けるためではありません。日本酒を通じて、日本の食文化の奥深さ、美味しさ、そしてその背景にある歴史や精神性までを、国内外へと伝えていくこと。それが、私の使命だと考えています。
私の根底にある言葉があります。
和食と日本酒、
その本質的な関係
和食は「油を足す料理」ではなく、「油を抜く料理」だと言われます。炊く、蒸す、焼く。素材の持つ余分な脂を落とし、旨味だけを丁寧に引き出す。それが和食の基本です。
洋食が“味の余韻の長さ”を美味しさの指標とするならば、和食の魅力は、キレがあり、澄み切った後味にあります。
だからこそ、日本酒にも同じ資質が求められる。料理を覆い隠すのではなく、そっと寄り添い、引き立てる存在であること。私たちは、大吟醸という酒質の可能性に、その答えを見出してきました。
龍力が目指す、
三つの味わい
私たちが一貫して追い求めている味の方向性は、次の三つです。
近年主流となっている「フルーティー」「フレッシュ」「ジューシー」とは一線を画し、より成熟し、洗練された領域で日本酒の価値を表現したいと考えています。
その答えを探る中で辿り着いたのが、「技術 × 素材 × 時間」、そして最終的には“土を極める”という考え方でした。
土に宿る時間と記憶
かつて、ある方からこんな話を聞きました。「火星には“土”は存在しない。あるのは砂と岩だけだ。たった1cmの土をつくるのに、100年から1,000年かかる。」
学べば学ぶほど、土という存在が持つ時間の重みに心を奪われました。
兵庫県には、酒米・山田錦の最高峰とされる特A地区があります。加東市から三木市にかけて広がるその土地の土壌は、300万年前から、ものによっては3,000万年前に形成されたものだとされています。まさに、地球の歴史そのものです。
特A地区は大きく三つに分けられます。
- 社地区 石や礫が多く、かつて川であった名残を持つ土壌
- 東条地区 礫が少なく、湖や沼から形成された粘土質の土壌
- 吉川地区 粘土と小石が層を成し、川の氾濫によって育まれた土地
この成り立ちを知ったとき、私はワインの銘醸地を思い浮かべました。ブルゴーニュは湖や海の隆起による土壌、ボルドーは川の氾濫による土壌。驚くほど、日本の酒米産地と共通点が多いのです。
なぜ、日本酒は
土を語らなかったのか
ここで、ひとつの疑問が生まれました。「なぜワインは土壌を語り、日本酒は栽培方法ばかりを語ってきたのか。」
フランスは日本と比べると水が乏しく、栽培地域が限られる。だからこそ「どこで?(where)」育つかが重要になり、土壌の話になる。
一方、日本には約14,000本もの一級河川があり、水系は109にも及びます。水が豊富だからこそ、「どこで(where)」よりも「何を(who)」「どう育てるか(How)」が重視されてきた。
しかし、日本にも確かにテロワールは存在する。その確信を得るため、私たちは同じ品種でも田んぼ違いで酒を仕込みました。すると、驚くほど明確に、味わいの違いが現れたのです。
動かないもの――土地。そこにこそ、唯一無二の価値が宿るのだと確信しました。
歴史の上に立ち、
未来を醸す
私の目標は、世界一の蔵元になることです。それは生産量の話ではありません。素材を知り、土壌を理解し、その背景にある時間と文化を語れるという意味で、世界一でありたいのです。
先祖代々受け継がれてきた遺産を、ただ守るのではなく、活かして次代へつなぐ。それこそが、「歴史の上に立つ」ということだと私は思います。
日本酒造りとは、日本文化そのものを伝える仕事です。だからこそ、まず自分自身が日本文化を誰よりも楽しむ。
その想いが、私たちの理念へとつながっています。
Enjoy Nippon
―― 日本文化を、楽しもう。





